グラフィックデザイナーとWeb（ウェブ）デザイナーは、それぞれ異なる分野で活躍する職種です。どちらも視覚的な魅力を追求する点では共通していますが、求められるスキルや制作物の特性には違いがあります。今回は、グラフィックデザイナーとWebデザイナーの違いについて詳しく解説します。
グラフィックデザイナーとは？
グラフィックデザイナーは、視覚的なデザインを通じて情報やメッセージを伝える専門職です。ここでは、グラフィックデザイナーの仕事内容や平均年収、求められるスキルについて紹介します。
仕事内容
グラフィックデザイナーの主な業務は、ポスターやパンフレット、広告などの印刷物をデザインすることです。下記のように段階的に進められます。
1.依頼受注・企画提案
クライアントの要望をヒアリングし、プロジェクトの目標や目的を明確にします。次に、それに基づいたデザインの企画を提案し、クライアントと協議して方向性を決定します。
2.デザインの制作
決定したコンセプトに基づき、IllustratorやPhotoshop、InDesignなどのデザインツールを使ってビジュアルデザインを制作します。レイアウト、色彩、タイポグラフィーを効果的に組み合わせ、魅力的で意味のあるデザインを作成します。
3.デザイン修正
クライアントからのフィードバックを受けて、デザインの修正を行います。クライアントの要望を理解しつつ、デザインの質を維持・向上させるための調整が求められます。
4.納品
最終的なデザインが完成したら、クライアントに納品します。納品形式や方法についてもクライアントのニーズに合わせて対応します。
平均年収
グラフィックデザイナーの平均年収は約509.3万円です。この数値は、デザイナーの経験、専門性、地域、企業の規模などにより変動します。業界の需要や経済状況によっても左右されるため、常に最新の情報を把握することが重要です。若手のデザイナーはまず実績を積むことで、年収アップやキャリアアップのチャンスを得られます。
出典：厚生労働省「職業情報提供サイト jobtag」
求められるスキル
グラフィックデザイナーとして求められる主なスキルは下記の通りです。
・デザインスキル
レイアウト、色彩、タイポグラフィー（文字の太さや種類、テキストのレイアウト）などの基本的なデザインスキルが不可欠です。視覚的なバランスや配色の調整を通じて、メッセージを効果的に伝える力が求められます。
・ソフトウェアスキル
Illustrator、Photoshop、InDesignなどのデザインソフトウェアのスキルが必須です。これらのツールを用いて、プロフェッショナルなデザインを作成し、クライアントのニーズに応えることが求められます。
・コミュニケーションスキル
クライアントの要望を正確にとらえなければならないため、ヒアリング力は必須です。また、デザインはチームでの共同作業が多いため、円滑なコミュニケーションも求められます。クライアントやチームメンバーと効果的に情報を共有し、意見をまとめる能力が重要です。
・情報整理スキル
印刷物のデザインでは、デザインスペースが限られているため、どの情報を入れるのか省くのかを判断するスキルが必須です。
Webデザイナーとは？
Web（ウェブ）デザイナーとは、主にWebサイトのデザインや制作を担当する職業です。ここでは、Webデザイナーの仕事内容や平均年収、求められるスキルを紹介します。
仕事内容
Webデザイナーの主な仕事内容は、WebサイトやアプリケーションなどのUI/UXのデザインを担当します。一般的には、下記のようなフローで作業を進めます。
1.ヒアリング
クライアントからの要望やビジネス目標を理解するための初期段階です。
2.サイト設計
サイトの構造を決定し、ユーザーの動線を設計します。
3.ワイヤーフレーム作成
サイトの基本レイアウトを示すワイヤーフレームを作成します。
4.デザイン
ワイヤーフレームに基づいて、具体的なビジュアルデザインを行います。
5.コーディング
HTML、CSS、JavaScriptなどを用いてデザインをWeb上で動作する形に仕上げます。
多くの企業では、Webデザイナーはデザインとコーディングのみを担当することが一般的です。しかし、フリーランスの場合、上記のすべての工程を1人で行うことが求められることもあります。
平均年収
Webデザイナーの平均年収は約509.3万円とされています。この数字は、企業の規模、勤務地、経験年数によって異なりますが、一般的には都市部で働くWebデザイナーの方が収入が高い傾向にあります。また、フリーランスとして働く場合、自分のスキルや実績によって収入が大きく変わることもあります。
出典：厚生労働省「職業情報提供サイト jobtag」
求められるスキル
Webデザイナーとして成功するためには、下記のようなスキルが求められます。
・デザインスキル
ユーザーに興味を持ってもらえる上、使いやすいサイトになるようにデザインを作成する能力が必要です。
・ヒアリングスキル
クライアントがどのようなものを求めているのかを正確に理解し、その要求に応じたデザインを提供するためのスキルです。
・コーディングスキル
HTML、CSS、JavaScriptなどのコーディングスキルも重要です。特に、会社によってはコーディングを担当することが求められる場合もあります。そのため、このようなスキルを持っているとWebデザイナーとしての価値がさらに高まります。
グラフィックデザイナーとWebデザイナーの違い
グラフィックデザイナーとWebデザイナー、それぞれの違いについて5つの観点から解説します。
デザインの対象物
グラフィックデザイナーは、ポスター、パンフレット、広告などの印刷物を中心にデザインします。これらのデザインは、一般的に紙などの物理的な媒体に対して行い、視覚的なインパクトと効果的なメッセージ伝達を目的としています。
一方、Webデザイナーがデザインするのは、ウェブサイトやアプリケーションなど、デジタル媒体です。デジタル環境に適したデザインが求められ、ユーザーのインタラクションやレスポンシブデザインが重要な要素となります。
デザインの範囲（サイズ）の違い
グラフィックデザインは、ポスターやフライヤーをはじめ、A4、B5のように限られたサイズの媒体に対してデザインを行います。デザインの範囲は基本的に固定されており、サイズに制約があります。
一方で、Webデザインは基本的に縦のサイズに制限がないため、スクロールによるページの長さの変化が可能です。また、PC、タブレット、スマートフォンなど異なるデバイスによって表示されるサイズも変わるため、複数の画面サイズに対応したレスポンシブデザインが必要となります。
デザインの自由度の違い
グラフィックデザイナーは、印刷物においてシンプルな表現が可能です。印刷物はデザインがそのまま物理的な形で再現されるため自由度が高いといえます。ただし、色味や画像の解像度は印刷プロセスに依存する部分もあります。
一方、Webデザイナーは動きのある表現が可能で、アニメーションやインタラクティブな要素を取り入れることができます。しかし、これらの表現はコーディングで再現できるかどうかも考慮しなければなりません。そのため、技術的な制約がある場合もあります。
色の表現方法の違い
グラフィックデザインの色は主にCMYKカラーを使用して制作されます。CMYKとは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色を組み合わせて色を表現する方法で、印刷物の色彩表現に適しています。
一方、WebデザインではRGBカラーが使用されます。RGBはレッド、グリーン、ブルーの3色を組み合わせて色を表現する方法で、デジタルディスプレイに適した色彩表現です。RGBは発光体での色表現であり、CMYKとは異なる特性を持ちます。
作業工程の違い
デザインが完成した後の作業工程にも違いがあります。グラフィックデザイナーはデザインを印刷して納品することで仕事が完了します。印刷前には、テキストのアウトライン化や印刷用の設定を確認し、クライアントの最終確認を得る必要があります。
一方、Webデザイナーは、デザインが完成した後もコーディングを通じて実装を行います。制作物の動作確認を行い、クライアントに納品する前に問題がないか確認するプロセスが必要です。また、納品後も修正や保守が求められることがあります。
グラフィックデザイナーかWebデザイナーはどちらが良い？
Webデザイナーとしてデザインスキルから習得を始めるのが、おすすめのキャリアパスです。理由として、Webデザインの仕事は依然として高い需要があり、紙媒体の需要は減少しています。そのため、Webデザインのスキルを磨くことで、多くのプロジェクトに携わる機会が得られるでしょう。
その後、グラフィックデザインの知識や技術も習得することで、デザインの幅を広げることができます。二刀流のアプローチにより、クライアントの多様なニーズに応えられるデザイナーとして価値が高まります。また、Webとグラフィックの両方を理解していることで、デジタルと印刷の両方のメディアで一貫したデザインを提供することが可能になります。
まとめ
グラフィックデザイナーとWebデザイナーは、異なる媒体を対象にしたデザインを行う職種です。グラフィックデザイナーは印刷物のデザインを、Webデザイナーはデジタル環境におけるデザインを担当し、それぞれ求められるスキルや技術が異なります。
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