飲食業からの転職を考えている方は多く、その背景には体力的な負担や労働環境の改善を求める声があげられます。厚生労働省の調査によると「宿泊業、飲食サービス業」は令和3年上半期の時点で約771万人が離職しており、全産業のなかで最も離職者数が多い結果です。
今回は、飲食業界から他の職種や業界へ転職を考えている方に向けて、成功するためのポイントを詳しく解説します。今より良い条件の職場を目指すために、転職活動の成功のコツを押さえておきましょう。
出典:厚生労働省「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」
飲食業からの転職を決めたらすべきこと
飲食業から他の業種への転職を成功させるためには、事前の準備が重要です。ここでは、転職を考える際に必要なステップを詳しく解説します。
転職の目的を明確にする
転職活動を始める前に、まず「なぜ転職したいのか」をはっきりさせることが大切です。転職の目的が明確になれば、それに沿った具体的な行動が取りやすくなります。
例えば、現在の仕事で体力的に厳しいと感じている場合は、残業が少なく体力を要しない職種を選ぶことで負担の軽減が期待できます。
また、収入アップを目指しているのであれば、給与水準が高く手当が充実している職種を検討することで、安定した収入を得ることが可能です。
さらに、ワークライフバランスを重視したい方は、正社員以外の派遣や契約社員といった多様な雇用形態も視野に入れることで希望する働き方に近づけるでしょう。
このように、現在の仕事で感じる不満や希望する条件を一つひとつ明確にしていくと、転職先として理想的な職種や企業が見つかりやすくなります。
自己分析をしっかり行う
自分に合った仕事を見つけるためには、自己分析が欠かせません。自分の特徴やスキルを見直すことで、自分に適した職種や職場環境が見えてきます。新卒時に行った自己分析があるとしても、実際の職務経験を積んだ現在とは状況が異なるため、改めて行うことが重要です。
自己分析の方法としては、5W1Hで自身の経験を掘り下げたり自分史を作成したり、マインドマップを利用して考えを視覚化したりする方法があります。
また、ジョハリの窓を用いて自分の強みや弱みを明確にし、さらにMBTI診断を活用して自分の性格や特性を把握することも役立ちます。
こうした手法を用いることで、自分に合う職場環境や職種がより具体的に見えてくるでしょう。自己分析を行わずに転職活動を進めると、希望に沿わない企業を選んでしまうリスクがあります。最悪の場合、転職に失敗する可能性があるため、自己分析は必ず実施しておきましょう。
飲食業で培ったスキルを整理する
飲食業で得たスキルは、他業種においても役立つものが多く、転職活動においてアピールポイントとして活かせます。
例えば、飲食業では多くの人と関わるためにコミュニケーション力や協調性が磨かれます。これらのスキルは、どの職場においても重要なスキルです。
また、飲食業での礼儀やマナーも他業種で活用できるスキルのひとつです。売上や在庫管理の経験は、業務改善や効率化の提案にも役立つため、数値に基づく説明ができるとより効果的です。
さらに、飲食業でのマネジメント経験がある場合は、チームの管理や教育に役立つスキルとしてアピールできます。
こうしたスキルは、転職先でも十分通用するものです。採用担当者に対して、これまで培ったスキルがどのように役立つかを具体的に伝えることで、良い印象を与えられます。
飲食業からの転職におすすめの業界・職種
飲食業での経験を活かしつつ、未経験でも挑戦しやすい業界・職種を紹介します。心身の負担を減らしながら、年収アップやキャリアの幅を広げるために、ぜひ参考にしてください。
営業職
飲食業で培ったコミュニケーション能力は営業職でも活かせます。日々の接客経験やクレーム対応など、お客様と接する機会の多い飲食業でのスキルは営業職にぴったりです。営業職には成果報酬があるため、頑張り次第で年収アップも期待できます。
例えば、食品営業は、食品メーカーの商品を顧客の売り場で扱ってもらうための提案活動を行う仕事です。年収の目安として、食品営業の平均年収は約579.5万円です。
出典:jobtag|厚生労働省「食品営業(食品メーカー)」
人材業界
人材業界では、飲食業で培った対人スキルが大いに活かせます。人と接する機会が多い仕事であるため、人材業界への転職は比較的スムーズに進められるでしょう。特にキャリアカウンセラーのように人の人生に寄り添う仕事は、対話力や人への気配りが求められます。
人材業界は年々市場が拡大しており、求人数も安定しています。キャリアカウンセラーの平均年収は約551.4万円で、安定した収入が期待できるでしょう。
出典:jobtag|厚生労働省「キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント」
介護・福祉業界
介護・福祉業界は、人に寄り添うスキルが活かせる業界で、対話力や忍耐力などスキルが求められます。高齢社会の日本において、需要が高い職種であり、安定した雇用が見込めるでしょう。
施設介護員の平均年収は、約371.4万円です。資格手当や処遇改善手当が支給されるため、年収アップも期待できます。
出典:jobtag|厚生労働省「施設介護員」
IT・Web(ウェブ)業界
IT・Web業界はデスクワークが中心のため、身体的な負担を軽減できます。飲食業で培った協調性やコミュニケーション力は、チームでの開発作業にも活かせます。未経験でも、プログラミングやWebデザインなどのスキルを習得すれば転職の幅が広がるでしょう。
SE(システムエンジニア)の平均年収は約557.6万円です。
スキルを習得するなら、オンラインスクールを活用するのがおすすめです。スクールによっては転職のサポートも実施しているため、未経験でも安心です。
IT関連の職種について知りたい方は、下記の記事もぜひチェックしてみてください。
出典:jobtag|厚生労働省「システムエンジニア(業務用システム)」
【年代別】飲食業からの転職を成功させるポイント
飲食業からの転職を成功させるために、年代ごとの特性を活かしたポイントを押さえておきましょう。それぞれの年代が持つ強みを理解し、効率良く転職活動を進めましょう。
20代はポテンシャル採用を狙う
20代は、これまでの経験が少なくても成長性や適応力が重視される「ポテンシャル採用」を受けやすい年代です。
労働政策研究・研修機構の調査によると、企業の中途採用の約26%がポテンシャル採用をしているという結果が出ており、未経験者でも転職を成功させやすい環境が整っていることが考えられます。特に営業職やIT業界では、若い人材が求められることが多いため、成長意欲や柔軟な考え方を示すことが重要です。
さらに、転職先に対する熱意を明確にすることも大切です。なぜその業界に興味があるのか、将来成し遂げたいことは何かを具体的に伝え、企業に対する関心や目標を持っていることを示しましょう。
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「中小企業における採用と定着」
30代は実績で即戦力アピールをする
30代の場合、飲食業で培ってきた経験や実績を活かし、即戦力としてアピールすることが転職成功のポイントです。これまでの業績を数字で示すと説得力が増し、企業にとって魅力的な人材として映ります。例えば、「売上を◯%向上させた」など、具体的な成果をあげると良いでしょう。
また、面接では「退職理由」や「志望動機」をしっかりと伝えることも大切です。なぜ飲食業からの転職を決意したのか、そして次に目指す職種や業界に対してどのような熱意を持っているのかを明確に伝えることで、面接官の納得を得やすくなります。
30代からの異業種転職については、下記の記事もぜひチェックしてみてください。
「30代から目指せる職業10選!異職種転職を成功させるポイントとは?」
飲食業から転職するときのよくある質問
下記で、飲食業からの転職についてよくある疑問とその解答を紹介します。
飲食業から転職したくなる主な理由は?
飲食業から転職したいと感じる主な理由は、下記のようなポイントがあげられます。
・収入が少ない、もしくは収入が上がりにくい
・仕事が体力的にきつく、毎日の勤務が負担になる
・仕事量が多く、休む時間が十分に取れない
・休日が少なく、リフレッシュする機会が少ない
・仕事を続けても成長している実感が得られない
これらの問題は、多くの飲食業従事者が抱える共通の課題です。産業別でみても飲食業界の離職者数は多い傾向にあります。今の職場に疲れを感じ、心身ともにリフレッシュし、より良い条件を求めて転職を検討する方が増えているのです。
飲食業より年収が下がるリスクはある?
飲食業から他の業種に転職した際に年収が下がるリスクは、ゼロとは言い切れません。新しい業種や職種によっては、スキルの習得や経験の積み重ねが必要な場合があり、それによって年収に影響が出ることもあります。
転職前にしっかりと準備を整え、スキルや経験を活かした職種を選べば、年収が下がるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
また、飲食業での接客スキルやマネジメント経験はほかの業種でも活かせるため、これをうまく活用すれば年収アップが期待できるケースもあります。転職活動を行う際には、自分の強みを見つけ、目標とする年収を実現できる職場探しを心がけましょう。
転職でキャリアアップはできる?
飲食業からの転職でキャリアアップを目指すことも十分可能です。特に営業職やIT業界といった成長が期待できる職種への転職は、将来のキャリア形成においても有効です。飲食業で培ったスキルに加えて、新たなスキルや経験を積むことで、より高いポジションへのステップアップが期待できます。
キャリアプランを立て、必要なスキルや資格の取得、実務経験の積み重ねなどを意識して行動することで、効率良くキャリアアップが図れる企業に就職することも可能です。さらに、転職エージェントや転職サービスを活用することで、キャリアアップに適した企業を見つけやすくなります。自分の目指すキャリアを実現するために、積極的に活用していきましょう。
まとめ
飲食業からの転職を成功させるためには、転職の目的を明確にし、自己分析を通じて自分の強みやスキルを見極めることが重要です。飲食業で培ったコミュニケーション力や対人スキルは他の業種でも高く評価されるため、それを活かせる職種を選びましょう。営業職、人材業界、介護・福祉業界、IT・Web業界などが特におすすめの分野です。新たな一歩を踏み出すための準備を整え、自分に最適なキャリアを見つけていきましょう。
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