エンジニアには多岐にわたる職種とスキルが存在し、キャリアを積むためには自分に合ったスキルを把握することが重要です。職種ごとに必要なスキルを知り、目標に向けて具体的な行動をとりましょう。今回は、エンジニアとしての成長をサポートするため、職種別・レベル別のスキルマップを解説します。
【職種別】エンジニアのスキルマップ
エンジニアと一言でいっても、その職種や役割は多岐にわたります。ここでは職種別にスキルマップを紹介し、各職種で必要とされるスキルについて解説します。
システムエンジニアの場合
システムエンジニア(SE)は、主にシステムの設計、開発、運用に携わる職種です。クライアントの要件をもとにシステムの仕様を決め、プログラムを開発するだけでなく、テストや運用までサポートします。
必要なスキルとしては、要件定義(※1)や設計能力、プログラミングスキル、プロジェクト管理能力があげられます。また、顧客や開発チームとのコミュニケーション能力も重要です。
※1:システム開発において、クライアントの要求や必要な機能をまとめる作業のこと。
Webエンジニアの場合
Web(ウェブ)エンジニアは、WebサイトやWebアプリケーションの開発に従事するエンジニアです。フロントエンド(※2)とバックエンド(※3)に役割が分かれており、それぞれに異なるスキルが求められます。
※2:ユーザーが直接触れるWebサイトの部分のこと。画面のデザインやボタンの配置、入力フォームなどが含まれる。
※3:ユーザーには見えない部分で、データの処理や保存を行う部分のこと。サーバーサイドの処理を担当し、ユーザーのリクエストに応じてデータを送ったり、受け取ったりする。
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、ユーザーが直接操作する部分の設計と開発を担当します。HTML(※4)、CSS(※5)、JavaScript(※6)といった言語の基礎スキルに加えて、ReactやVue.jsなどのフレームワーク(※7)の理解が必要です。デザインに関する知識や、ユーザーエクスペリエンス(UX)(※8)を意識した開発ができることも重要です。
※4:Webページを作るための言語。
※5:Webページの見た目(文字や背景、画像など)を設定する言語。
※6:動きのある処理を実現するためのプログラミング言語
※7:プログラムを作るための土台や枠組みのこと。開発者は、その枠組みに従ってコードを書くことで、効率的にシステムやアプリを作成できる。
※8:ユーザーが製品やサービスを使用する際に得られる体験の質
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアは、サーバー(※9)側の処理を担当します。データベース(※10)の設計やサーバーの管理、API(※11)の開発が主な役割です。必要なスキルには、Java(※12)やPython(※13)などのサーバーサイド言語(※14)、SQL(※15)を用いたデータベース管理、セキュリティ対策の知識が含まれます。
※9:インターネットを通じてユーザーにサービスを提供するコンピュータのこと。
※10:大量のデータを効率的に保存・管理・検索できるようにした仕組み。
※11:Application Programming Interfaceの略。異なるソフトウェア同士がデータをやり取りするための仕組み。
※12:1995年に開発された、安定性と信頼性に優れたプログラミング言語。大規模なビジネスシステムの開発によく使用されている。
※13:シンプルで読みやすい文法が特徴のプログラミング言語。人工知能やデータ分析の分野で広く使われている。
※14:サーバーで動作するプログラムを書くための言語。例えば、ユーザーがログインしたり、データベースから情報を引き出したりするような処理はサーバーサイド言語で実行される。
※15:Structured Query Language(構造化問合せ言語)の略。データベースの操作や管理を行うための言語。
インフラエンジニアの場合
インフラエンジニアは、システムが円滑に稼働するための基盤を構築・管理する役割を担います。サーバー、ネットワーク、ストレージ(※16)などのハードウェアの管理や設定が求められるため、ネットワーク設計やセキュリティ対策に関する知識が重要です。また、障害発生時の対応力や、クラウド技術(※17)に関する知識も求められるようになってきています。
※16:データを保存するための装置
※17:インターネットを通じてコンピュータのリソース(サーバー、ストレージ、ソフトウェアなど)を必要な時に必要な分だけ利用できるサービスのこと。
クラウドエンジニアの場合
クラウドエンジニアは、クラウドサービスの設計・構築・管理を行うエンジニアです。AWSやAzure(アジュール)、Google Cloudといったクラウドプラットフォームに精通し、インフラのコード化(IaC: Infrastructure as Code)(※18)に関する知識も必要です。クラウドのセキュリティやコスト管理についても理解しておくと良いでしょう。
※18:インフラをコード化して管理・構築の自動化を行うこと。
AIエンジニアの場合
AIエンジニアは、機械学習や人工知能の開発・実装に携わる職種です。Pythonなどのプログラミングスキルに加え、TensorFlowやPyTorchなどのライブラリ(※19)の知識が求められます。
また、データの前処理やアルゴリズム(※20)の実装、統計や数学的な知識も必要です。データサイエンスの視点を持って、問題解決にアプローチする能力が求められます。
※19:特定の機能を実装するためによく使われる便利なコードの集まり。必要な機能を呼び出して使うだけで、自分で一から作る手間が省ける。
※20:特定の問題を解決するための手順。
セキュリティエンジニアの場合
セキュリティエンジニアは、システムの安全性を確保し、サイバー攻撃から保護するための施策を講じる職種です。ネットワークやOSの基礎知識、暗号化技術や認証システムに関する知識が求められます。
また、最新の脆弱性や攻撃手法に対する知識を常にアップデートする姿勢も重要です。
セールスエンジニアの場合
セールスエンジニアは営業活動を技術的にサポートする役割で、顧客の技術的な疑問に答えて、製品やサービスの導入を支援します。製品の技術的な知識や、顧客の要望を理解してわかりやすく説明するコミュニケーション能力が求められます。
また、プレゼンテーションスキルや交渉力も役立つスキルです。
【レベル別】エンジニアのスキルマップ
エンジニアとして成長するために、自身のレベルに合ったスキルや知識を段階的に身に付けることが重要です。ここでは、エンジニアのスキルマップをレベル別に解説し、それぞれの段階で必要なスキルや学習内容について詳しく説明します。
未経験の場合
未経験の段階では、プログラミングの基本を理解し、簡単なプログラムを作成できるようになることが目標です。まずは下記の基本的なスキルを習得しましょう。
・HTMLやCSSなどのフロントエンドの技術
Webページの構造や見た目を作成するための基礎です。HTMLでサイトの構造を定義し、CSSでデザインを整える力を養います。
・PythonやJavaなどの汎用性の高いプログラミング言語
バックエンドエンジニアを目指す際にも役立つ言語です。まずはPythonやJavaの基礎を理解し、簡単なプログラムを作成してみましょう。Pythonはコードの書き方もシンプルで分かりやすく、未経験者はPythonから学習するのがおすすめです。
・アルゴリズムの学習
論理的な問題解決能力を磨くため、アルゴリズムの基本を学びます。プログラムを効率的に書く方法や、データの処理方法を理解することで、プログラミングの基礎力が向上するでしょう。
・Gitの使い方
「Git(ギット)」とは、コードの変更を記録してくれるツールです。Gitを使うと、これまでの変更をすべて保存してくれるので、いつでも好きなところまで戻ることが可能です。チームで開発するときも、複数の方が同じコードを変更しても混乱しないように「誰が」「どこを」「どう」変更したかを追跡できるようになります。これを「バージョン管理」と呼びます。
・ソフトウェアのライフサイクル
ソフトウェア開発の一連の流れのことです。一般的には、下記のような流れで実施されます。
1. 企画:どんなソフトウェアを作るかを決めます。ユーザーの問題を解決するアイデアや目的を考えましょう。
2. 設計:ソフトウェアを作るにあたり、どんな機能が必要か、どうやって動くかを設計します。
3. 実装:実際にプログラムを書いてソフトウェアを作ります。
4. テスト:ソフトウェアが正しく動くか、エラーがないかを確認しましょう。
5. 運用と保守:公開後、ユーザーからのフィードバックを受け、必要に応じて修正や機能追加を行います。
・アジャイル開発の理解
ソフトウェア開発を段階的に進める方法です。大きな機能を一度に完成させるのではなく、まず小さな機能を作ってテストし、徐々に機能を追加します。このような開発方法では、問題が見つかったときにすぐ修正でき、ユーザーの要望にも柔軟に対応できます。アジャイル開発では、短い期間ごとに開発を進め、途中で改善点を見つけながら進めるのが特徴です。
初心者の場合
初心者の段階では、自分のアイデアをコードに落とし込むことができ、アプリの基本的な機能を実装できるようになることを目指しましょう。この段階では、エラー解決のスピードが向上し、問題解決力が高まります。
フロントエンドエンジニアを目指す場合
フロントエンドエンジニアを目指すなら、主にHTMLとCSSの学習が基本です。HTMLとCSSを学ぶことで、Webページのレイアウトを作成したり、デザインを調整したりするスキルを身に付けられます。
次に、JavaScriptの基礎を学ぶことが必要です。JavaScriptを習得すれば、Webサイトに動きを加えたり、ユーザーとインタラクション(※21)できる機能を実装したりすることが可能になります。HTMLやCSSだけでは実現できない要素も多いため、JavaScriptの知識は必須といえるでしょう。
さらに、Gitの基本操作も身に付けておくと良いでしょう。バージョン管理システムであるGitを使えば、コードの変更履歴を管理でき、特にチームでの開発において役立つ知識です。
※21:ユーザーが何らかの操作をしたときに、システムや機器が反応を返す仕組み。
バックエンドエンジニアを目指す場合
バックエンドエンジニアを目指す場合は、PHPの基本的な構文理解から始めることが大切です。PHPはサーバーサイドで多く利用されているプログラミング言語で、基礎からしっかり学ぶと、配列や関数、オブジェクト指向(※22)といった複雑な概念にも段階的に取り組めるようになるでしょう。
データベースの操作を理解し、SQLを使ったデータ管理も学習が必要です。SQLは、データの管理や操作に必須のスキルであり、多くのWebアプリケーションで必要とされています。
また、Gitの操作に加えてRESTful API(※23)の設計原則やフレームワークの利用方法も学ぶことで、バックエンド開発を効率的に進められるようになるでしょう。APIの設計やフレームワークの活用法を理解することは、実践的な開発において重要なスキルといえます。
※22:プログラムの中でデータや機能を『もの』としてまとめて扱う考え方のこと。
※23:「REST(レスト=Representational State Transfer)」の原則に則って構築されたAPIのこと。RESTは、Webサービスの設計モデルのひとつで、HTTP プロトコルを利用してデータの送受信を行う。
中級者の場合
中級者は、特定の技術についてより深い理解を持ち、実践的なスキルを発揮する段階にあります。コードの効率化するスキルを磨き、複雑な問題にも対応できる能力が求められるでしょう。
・プログラミング言語の深い知識
使用する言語に関する高度な知識を習得し、効率的かつメンテナンスしやすいコードを書く力を身に付けましょう。
・データベース設計と操作
データベースの構造を設計し、適切に管理するスキルを持つことで、効率的なデータ処理が可能になります。
・APIの作成と利用
APIの設計と活用方法を理解し、システム間の連携をスムーズに行うスキルを身に付けましょう。
・フレームワークやライブラリの利用
フレームワークを使って開発効率を高め、ライブラリを活用して実装の幅を広げます。
・ソフトウェアテストの導入と実行
テストの自動化や手動テストの実施を行い、品質管理を行いましょう。
・チームでの作業への適応
バージョン管理システムの運用やプロジェクト管理ツールの使用、コードレビューへ参加するなど、チームでの開発に慣れていることが期待されます。
上級者の場合
上級者には、最新の技術トレンドの把握と、チームをリードするためのソフトスキルが求められます。リーダーシップを発揮してプロジェクトを円滑に進行させるスキルも重要です。
・技術の最新トレンドの理解
新しい技術の動向を追い、最新のツールやフレームワークを柔軟に取り入れる力を持ちます。
・チームのリーダーシップ
プロジェクトをリードし、メンバー間のコミュニケーションを円滑にする力が求められます。
・プロジェクトマネジメント
プロジェクトの進行管理、タスクの割り振り、納期の調整など、全体を見渡しながら効率的にプロジェクトを進めるスキルが必要です。
・問題解決能力の高度化
複雑な技術的問題に対して迅速に対処し、チーム全体での課題解決に貢献する能力が求められます。
・コーチングスキル
後輩エンジニアに対して指導し、成長を支援するコーチング能力も上級者には重要なスキルです。
今の自分に必要なスキルを見つける方法
エンジニアとして成長を目指すには、まず自分に必要なスキルを見極めることが大切です。スキルマップを活用することで、目指すエンジニア像に到達するための道筋を明確にしましょう。
ステップ1|キャリアの目標を立てる
エンジニアにはさまざまな職種があり、職種によって求められるスキルも大きく異なります。そのため、将来的にどのようなエンジニアを目指したいのかを明確に考えることが重要です。
例えば、フロントエンドエンジニアを目指すのであれば、HTMLやCSS、JavaScriptなどの技術を基礎として習得することが求められます。目指すキャリアの方向性が固まることで、スキルマップを用いた自己分析や今後の成長目標が見えやすくなります。
ステップ2|現在のスキルを客観的に評価する
現在の業務内容や持っている知識・スキルが、目指すエンジニア像に近づいているかを確認しましょう。スキルマップを活用することで、今の自分がどのレベルに位置しているのか、目標に対してどれくらいの差があるのかが具体的に見えてきます。
例えば、現在の業務で扱っている技術や習得した知識を整理すると、自分に必要なスキルが明確になります。定期的にスキルの棚卸を行い、スキルアップに向けた具体的なアプローチを見つけていきましょう。
スキルを身に付けて成長したいエンジニアの方へ
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まとめ
エンジニアのキャリア構築に必要なスキルを職種・レベルごとに整理したスキルマップは、未経験者から上級者までそれぞれの成長段階に応じた学びの指針となります。自身の現在のスキルを客観的に評価し、明確なキャリア目標を持つことで、目指すエンジニア像に近づけます。次のステップに進むため、スキルマップを活用して、計画的なスキルアップを目指しましょう。